空調施工では「冷媒配管工事」が重要
空調関連の仕事をされている皆様には常識かもしれませんが、冷媒配管工事は空調施工の中でも特に重要な工事です。この冷媒配管工事では、室外機・室内機間で冷媒ガスが適切に循環するよう正しく施工する必要があります。
「ロウ付け」とは
冷媒配管工事には、空調機によってはロウ付け作業が必要になります。
「ロウ付け」とは、火を使って冷媒配管(=銅管)同士を接続する作業です。
ルームエアコンのように室外機と室内機が1対1の場合はロウ付け作業の必要はありませんが、パッケージエアコンなどの業務用エアコンの工事では、室外機1台に対し室内機が複数台必要なため、冷媒配管を分岐するなど複雑な配管施工を要します。そのため、一般的には火を使ったロウ付け作業が必要になります。
ただ、近年の空調業界を取り巻く環境下では、このロウ付け作業が一筋縄ではいかない、やっかいな作業となっています。
課題1 ロウ付け作業ができない!火気厳禁の現場とは?
新築物件の空調工事は、天井も張られておらず未入居の状態で施工が進められるため、作業の自由度がある程度高くなります。
対して、既築物件の空調機更新工事の場合には事情が変わってきます。
既築物件では天井が張られた状態で工事をするため、作業の自由度はあまり高くありません。
また、入居済みの物件であるため建物内部に様々なものが置いてあることが想定されます。そのため、それらへの引火を防止するための養生作業や、消火用のバケツの準備などが必須です。
「火を使用する=火災のリスク」という観点から、安全策として、現場での火気使用を禁止している現場もあります。
そうした現場では、事前に冷媒配管をロウ付け加工し、現場に持ち込んで作業するケースもあるようです。
火を使わないため安全ではありますが、作業効率を考えると頭の痛い作業です。
課題2 ベテラン技術者の引退と若手技術者の減少
冷媒配管工事の課題は、物理的な問題だけではありません。
空調業界だけでなく日本全体で少子高齢化が進んでいるため、ベテランの技術者が次々と退職していく中、若手技術者が育っていないという現状があります。
ロウ付けのように経験や技術力が求められる作業では、人による施工品質が不安定になりがちです。ところが、ロウ付け箇所に少しでも隙間があれば冷媒ガスが漏れてしまい、重大な事故につながる可能性もあるのです。
「ロウ付け」から「継手方式」の時代へ
こうした課題を解決するため、近年では、ロウ付け不要で冷媒配管工事が可能になる「冷媒配管用継手」が販売されています。冷媒配管用継手には様々な種類がありますが、基本的には「ロウ付け」の代わりに「継手」を使って冷媒配管を接続していきます。
ロウ付けのように施工品質が経験や技術力に左右されるということもなく、各メーカーの標準施工ルールに則った施工をするだけで冷媒配管同士の接続が可能です。
ただし、冷媒配管用継手は各メーカーによって使用方法が異なり、施工資格が必要になることもあります。(施工資格については、冷媒配管用継手の各メーカーにお問い合わせください)
冷媒配管工事といえば「ロウ付け」が基本的な施工方法でしたが、これからは「継手方式」を求められる現場も増えていくかもしれません。現場に合わせて適切な工事ができるように、継手方式で施工したことがない方は、一度試してみてもいいかもしれませんね。
継手方式にはプレ加工ジョイントをセットで
さきほど、ビル用マルチエアコンなどの大型空調機では、ひとつの室外機に複数の室内機をつなぐために冷媒配管を分岐させるということがよくあると述べました。
このとき、使用する分岐管も保温加工済みのもの、継手の差込代がマーキングされているものを使うことで、施工性が一気に向上します。
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